訪問歯科を始めたあと、患者を増やすために介護施設への営業を考える医院は少なくありません。
ただ、いざ動こうとすると、
「どの施設に行けばいいのか」
「協力歯科がある施設にも営業していいのか」
「とりあえずパンフレットを持って挨拶に行けばいいのか」
と迷うことがあります。
介護施設は、訪問歯科にとって重要な依頼経路の一つです。厚生労働省の調査でも、歯科訪問診療を始めたきっかけとして、介護保険施設や有料老人ホーム・グループホームなどからの紹介が一定の割合を占めています。
一方で、施設にはすでに協力歯科医療機関があることも多く、単純に「訪問歯科をやっています」と伝えるだけでは、その施設にとって必要な提案になるとは限りません。
以前の記事では、患者が増えない理由を営業だけに求めず、依頼の入口や院内体制まで確認する必要があることをお伝えしました。
関連記事:訪問歯科を始めたのに患者が増えない理由|営業の前に確認したい5つのポイント
今回はその次の段階として、実際に施設営業をするなら、何を見てから動くのかを4つの視点から整理します。
訪問歯科の施設営業は「自院の説明」から始めなくてもいい
施設営業というと、自院のパンフレットを持って行き、
「訪問診療をしています」
「義歯にも対応できます」
「口腔ケアもできます」
と説明するイメージがあるかもしれません。
もちろん、自院が何に対応できるのかを伝えることは必要です。
ただ、その前に確認したいのが、その施設では現在、歯科とどのように関わっているのかということです。
介護施設では、口腔衛生管理に関する歯科専門職との連携が制度上も重視されています。令和6年度の調査でも、口腔衛生管理に関する技術的助言・指導を行う歯科医師について、多くの施設で協力歯科医療機関が関わっていることが示されています。
つまり、施設営業を「まだ歯科が入っていない施設を探すこと」だけで考えると、実際の施設の状況を捉えきれません。
まず見たいのは、協力歯科があるかどうかではなく、今その施設で、歯科がどこまで関わっているのかです。
介護施設へ営業するときに持っておきたい4つの視点
協力歯科の「有無」ではなく、今どこまで関わっているかを見る
施設へ営業するとき、
「協力歯科があるなら、もう営業する意味はない」
と考えることがあります。
反対に、
「協力歯科はあるけれど、うちも入れるかもしれない」
と考えることもあるかもしれません。
私は、どちらも少し単純化しすぎていると感じています。
「協力歯科がある」という情報だけでは、実際にどこまで対応しているのかまでは分かりません。
訪問診療まで行っているのか。
定期的な歯科健診を行っているのか。
口腔衛生管理への助言が中心なのか。
治療が必要になったときは、どのように対応しているのか。
施設によって、歯科との関わり方は異なります。
そのため、営業先を考えるときは、
「協力歯科があるか」ではなく、「現在、どのような歯科との関わりがあるのか」
を見る方が、実際の状況を把握しやすくなります。
ここで重要なのは、既存の協力歯科を置き換えることを前提にしないことです。
今ある連携を尊重したうえで、もし現在の体制では対応しにくい部分があるのであれば、そこに自院が関われる余地があるのかを考える。
施設営業では、この順番が大切だと感じています。
「何を話すか」より、「何を知りたいか」を決めてから行く
施設営業の準備をするとき、
「何と声をかけよう」
「どんな説明をしよう」
「どんな資料を持って行こう」
ということを先に考えがちです。
ただ、私自身が施設と関わる中で感じていたのは、自院の説明をする前に、その施設の現状を知らなければ話がかみ合わないということでした。
たとえば、
現在、歯科とはどのように関わっているのか。
治療が必要になったときはどうしているのか。
今の体制では対応しにくいことがあるのか。
こうしたことが分からないまま自院のサービスを説明しても、その内容が施設にとって必要なものなのか判断できません。
施設営業というと、「説明しに行く」というイメージが強いかもしれません。
しかし最初の接点は、施設の現在地を知る場でもあると考えておくと、営業の見え方が変わります。
細かな質問項目をたくさん用意する前に、まずは「この施設について何を知りたいのか」を整理してから訪問することが大切です。
「当院はこれができます」だけの営業になっていないか
訪問歯科の営業では、
「訪問診療に対応しています」
「義歯の修理ができます」
「口腔ケアに対応できます」
といった、自院ができることを伝える内容が中心になりやすいと思います。
これ自体が悪いわけではありません。
ただ、施設側からすれば、すでに歯科との関わりがある場合、
「今の歯科で間に合っています」
で終わることもあります。
大切なのは、自院の機能をたくさん説明することではなく、その機能が施設の現状と結びついているかどうかです。
自院では対応できることであっても、施設側が必要としていなければ、その情報の優先度は高くありません。
反対に、現在の体制では対応しにくいことがあり、自院がそこを補えるのであれば、初めて説明の意味が出てきます。
施設営業では、
「当院は何ができますか」だけではなく、「この施設では、どこに歯科として関われる余地があるのか」
という視点を持っておくことが必要です。
初回営業を「その場で患者紹介があったか」だけで評価しない
施設へ営業に行ったあと、その場で患者紹介がなければ、
「この施設は見込みがないのかもしれない」
と感じることがあります。
ただ、初回訪問のタイミングで、たまたま歯科治療を必要としている入所者がいるとは限りません。
また、その場で紹介がなかったという事実だけでは、その施設に歯科ニーズがないとも判断できません。
私自身も施設へ営業していたとき、初回の訪問では患者紹介の有無だけではなく、
その施設が現在どのように歯科と関わっているのか。
自院が関われそうな部分があるのか。
ということも見ていました。
もちろん、一度営業すれば後から必ず依頼につながる、という意味ではありません。
ただ、その日の患者紹介だけを基準にしてしまうと、施設の状況を十分に確認しないまま「見込みなし」と判断してしまう可能性があります。
初回営業では、まず施設の現状を知る。
そのくらいの位置づけから始めた方が、目の前の紹介だけを求める営業にはなりにくいと考えています。
施設営業で大切なのは「どこへ行くか」より「何を見て行くか」
訪問歯科の施設営業では、
「どの施設へ行けば患者が増えるのか」
を知りたくなると思います。
もちろん、営業先をどう選ぶかは重要です。
ただ、その前に確認しておきたいのが、その施設をどう見るかです。
協力歯科があるか。
ではなく、今どこまで関わっているのか。
何を説明するか。
ではなく、まず何を知りたいのか。
自院が何をできるか。
だけではなく、その施設の現状と結びついているか。
そして、初回の患者紹介だけで営業の成否を判断しない。
こうした視点を持っておくことで、施設営業は「パンフレットを配る活動」だけではなく、施設と歯科の現在地を確認する活動にもなります。
具体的な営業先の選び方や施設ごとの優先順位、ヒアリング項目、営業トークなどは、医院の体制や地域によって変わります。
まずは営業件数を増やす前に、自院が施設をどのように見ているかを確認するところから始めてみてください。
施設営業を始める前に、院内側の準備も確認する
施設営業がうまくいき、実際に依頼が増えたとしても、その依頼を受け止める院内体制が整っていなければ、訪問歯科の運営は苦しくなります。
電話の窓口、診療スケジュール、書類、家族への連絡、スタッフ間の役割分担など、患者が増えた後に必要になる業務もあります。
「患者が増えないから、まず営業を増やそう」と考えている場合は、営業に出る前に自院側で確認しておきたいこともあります。
関連記事:訪問歯科を始めたのに患者が増えない理由|営業の前に確認したい5つのポイント
施設営業と院内体制は、別々の問題ではありません。
「依頼を増やすこと」と「増えた依頼を受け止めること」の両方を見ながら進めることが、訪問歯科を継続していくうえでは必要です。
無料の「訪問歯科運営診断」
施設営業を始める前に、
「そもそも自院は営業を増やす段階なのか」
「どこに見直しの余地があるのか」
を整理しておきたい場合は、無料の「訪問歯科運営診断」をご利用ください。
20の質問に答えることで、依頼の入口、施設・ケアマネジャーとの連携、院内体制など、現在どの領域に見直しの余地がありそうか確認できます。
参考資料
1.厚生労働省
「令和4年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査 在宅医療と訪問看護に係る評価等に関する実施状況調査」
歯科訪問診療を実施したきっかけとして、「介護保険施設からの紹介」19.2%、「有料老人ホーム、グループホーム等からの紹介」13.7%、「介護支援専門員(ケアマネジャー)からの依頼・紹介」17.3%と報告されています。
2.厚生労働省
「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」
口腔衛生管理に関する技術的助言・指導を行う歯科医師について、介護老人福祉施設87.8%、地域密着型介護老人福祉施設90.7%、介護老人保健施設86.5%、介護医療院84.5%、特定施設入居者生活介護85.9%で、「協力歯科医療機関」が最も多いと報告されています。


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